どたばた秘書日記２ ラスト 6/30

６月３０日（月）
【これからもよろしく】
　
　さて、片付けるか。
　さて、机のまわり、片付けるか。
　さて、まわりの人たちにあいさつしよう。
　さて、向こうの人たちにもあいさつしよう。

　教授が「さて、」という度にドキっとする。私の仕事も片付けも恐ろしく進まない。
　Ｏ准教授が「いつでもお手伝いしますよ」と言ってたよ、と教授。そーですか、いつでもっておっしゃってました？では、土・日に来てもらいましょうか、なんて冗談を言いながら淡々と片付けをした。

「今日で最後なんて思えないなあ」

教授はそうでしょうけど、私にしたら今日は最後。何だかんだ言っても楽しかったですよ、と言うと「そうだね。最初の頃は、何もわからなくて大変だったねえ」なんて言いながらも片付けを続けた。

　午後は教授に返すものをまとめた。印鑑、電卓、定規、コーヒー代の預かり金の残り。
「いろいろ買ってくれてたし、いいよ」と言って受け取ってくれなかった。千円ちょっと残ってる。はがきか切ってを買って、教授に必要な通信に使おうと思う。

　机上に置く棚を何段か、必要ですかと尋ねると、欲しいという。「未決」だの「既決」だの、ちゃんと分けておきたいらしい。でもムリね。未決のまま積み重なるし、既決もファイルを怠り、やわな書類棚がしなるまで放っておくに違いない。そんなことお見通しだけど、差し上げますよ、その棚は。一個１０５円だし。

　夕方、遠くの研究室へ挨拶に行ったきりなかなか戻って来ない。７時頃やっと戻ってきて、スキャナやディスプレイを梱包して「帰ろう」と言った。
　私はまだすることがあったけど、一緒に部屋を出た。外は小雨。

「傘、ないの？駅まで乗って行く？」「いいえ、大丈夫です。」
「じゃ、傘、貸そうか？」「いいえ、大丈夫です。」
「では、また。お疲れ様。これからもよろしく。」

・・・これでオワリ。じゃないってことです。明日から生命農学研究科。私の教授にもまだまだお世話になります。